あれは、2011年9月下旬だったと思う。
私は、2011年9月16日夜、トルコのイスタンブールのアタチュルク国際空港を、エジプト航空で出発し、翌17日早朝に、エジプトの首都カイロに着いた。
到着した日から、1週間後ぐらいだったと思う。
私は、カイロのザマレクの、外国の大使館が、林立している地域を歩いていた。
ブラジルかどこかの大使館の前で、私は、背負っていたリュックから、ガイドブックを出そうとして、
「よいしょ」
と、リュックを地面に下した。
それぞれの大使館の前には、小さな守衛用の小屋があり、中に、ひとり、長い銃を持った兵隊が立っている。
その大使館の前にいた兵隊は、なぜか、小屋の外にいて、私のほうに近づいて来た。
私が、リュックを、地面に置くと、兵隊は、銃口を、私に向けて、アラビア語で何か言った。
私に、アラビア語がわかるわけがない。
妙な緊張感があった。
私が、リュックのチャックを開けた瞬間、兵隊が、変な顔をした。
銃の引き金を引いたが、弾が出なかったようだ。
私は、リュックから、ガイドブックを出して、地図を見ながら、通りを指さして、方向確認し、また、歩き出した。
当時、エジプトでは、兵隊に、爆弾を投げつける、テロが、横行していたようだが、まさか、私(日本人女性)が、テロリストと間違えられるなんて、考えもしなかった。
エジプトは、当時、革命中だった。
外務省のホームページでは、「渡航の是非を検討してください」だった。
その兵隊の持っていた銃は、故障していたか、もともと、弾を込めていなかったんだろう。
エジプトの兵隊の持っている銃は、どれも、大変古い。
エジプトでは、大通りに面したショーウインドウに、銃や弾を飾って、売っている。
私は、合わせて、約1年間、エジプトに滞在したが、怖い思いをしたのは、この時だけだ。
革命中のエジプトには、外国人観光客は、ほとんどいなかった。