私は、2008年1月、バックパッカーの聖地・バナラシに到着した。
前年9月に、ネパールの首都カトマンズのインド大使館で取得したインドの観光ビザ(6か月間有効)も、3月には、切れる。
バナラシの後、列車で、ブッダガヤ―へ行き、さらに、列車で、コルカタへ行く。コルカタからは、ビザが切れる前に、飛行機で、インドネシアのバリ島へ飛ぶ。
私は、バナラシで、最初、ベンガリートラから離れたところにあるゲストハウスに泊まった。1泊350ルピー(約1050円)。トイレ、水シャワー、大ベッドひとつがある部屋だ。屋上に建てられた部屋だった。
私は、毎日、近くの市場で、みかんを袋で買った。
朝起きるとすぐ、みかんを食べ、その食べかすを袋に入れ、ドアの外に出して置いた。匂いが、室内に、こもる気がしたのだ。そして、また、昼まで寝てから、起きだし、外出した。
異変は、すぐに起きた。
私が、みかんの食べかすを入れた袋を、ドアの外に出し、パタンと、ドアを閉めたとたんに、何頭もの猿が、みかんの食べかすを狙って、奪い合う音が聞こえた。
翌朝からは、私が、ドアを開けると、何頭もの猿が、あちこちの物陰から、じっと、私を見つめていた。
私が、ドアを閉めるやいなや、猿たちは、みかんの食べかすに殺到した。キャキャと声を立てながら、ケンカして、奪い合う音が聞こえてきた。
その次の日の朝、私が、ドアを開けると、やはり、何頭もの猿が、あちこちの物陰から、じっと、私を見つめていたが、その位置が、前進していた。より、ドアに近くなっていた。私が、ドアを閉めるやいなや、猿たちは、ドアのところに殺到し、みかんの食べかすの奪い合いを始めた。
しばらくして、ドアを開けると、そこら中に、みかんの皮が散らばっていた。
その次の日の朝、私が、ドアを開けると、やはり、何頭もの猿が、あちこちの物陰から、私をじっと見つめていた。
しかも、その位置が、さらに前進し、ドアに近づいていた。私がドアを閉めるやいなや、猿たちは、みかんの食べかすに殺到して、奪い合いを始めた。
私は、怖くなった。あまりに猿が近づきすぎている。猿も、人に、ケガをさせることがある。