次の日から、私は、みかんの食べかすを、ドアの外に出さず、外出するとき、建物内にある、ごみ捨て場に捨てることにした。
翌朝から、私は、みかんを食べても、食べかすを、ドアの外に出さず、袋に入れて、ドアの内側に、置いておいた。後で、ごみ捨て場に捨てる。
猿たちは、私が、みかんの食べかすを、くれないことに気づいた。
私は、みかんを食べた後、また、ベッドで寝ていた。
猿たちは、屋根の上を、ドンドンバタバタと走り回って、うるさく騒いだが、私は、じっと我慢した。
私は、その日から、みかんの食べかすを、きちんと、屋内のごみ捨て場に捨てるようになった。
翌日、私は、外出しようとして、ドアを開け、びっくりした。
屋上の物干し竿(さお)の下に、シーツが、ぐちゃぐちゃになって、丸めてある。ドロドロである。干してあったシーツを、猿が引きずりおろし、ぐちゃぐちゃに汚したらしい。
猿は、私に、復讐したつもりだろう。
「私が干したシーツじゃないんだけど」
と私は思った。
その次の日、私が外出しようと、ゲストハウスを出ようとしたとき、ゲストハウススタッフの若い男が、私の方を見ながら、何か怒って、怒鳴っていた。中年のインド人男性が、その男の前に立ちふさがり、その男を抑えていた。
「あの男が洗濯したシーツだったんだろう」
と私は思った。
せっかく洗濯したのに、ぐちゃぐちゃに汚され、怒ったんだろう。
「少しは、私のせいかも」
と私は思った。
これから先も、猿が、洗濯ものを、引きずり下ろし続けるかどうか、私には、わからなかった。
でも、あの若い男が、すごく怒っていて、少し怖くなったので、私は、別のゲストハウスに移った。
今度は、ベンガリートラにほど近いゲストハウスだ。
(了)