2008年1月のある日のことだ。
私は、バナラシのどこかのガートを歩いていた。
少し離れたところで、サリーを着た、裕福そうな、インド人と思われる女性が、立ち止まって、そばにいた物乞いに、施しを与えようとした。
次の瞬間、そこら中の物乞い、200人くらいの物乞いが、一斉に、その女性に向かって、突進した。
その女性は、
「きゃあ!」
と悲鳴を上げて、倒れ、私の視界から、消えた。
私は、
「インド人同士だから、なんとかするだろう」
と思って、静かに、その場を離れた。
インドのバナラシには、たくさんの物乞いがいる。
外国人も、たくさん、観光に来ている。
インドの物乞いは、目が、ぎらぎらしているので、
「カバンから、財布なんか、出したら、財布ごと、取れそうだ」
と思って、私は、一度も、施しをしたことがない。
ネパールの物乞いは、おとなしそうなので、何回か、施しをしたことがある。