２０１１年１月末頃だった。
私は、タイの首都バンコクを去り、マレーシアの首都クアラルンプールに移った。
当時、タイの観光ビザは、無料だったが、２年間くらい滞在すると、ビザが下りなくなる。
それで、私は、タイを去ることにしたのだ。
クアラルンプールには、エアアジアで行ったが、夕方の便しか取れなかった。
私は、エキスプレスで、KLセントラル駅に行き、KLセントラル駅から、タクシーに乗って、ガイドブックに載っていた、１泊２０００円ほどのホテルに向かった。
ホテルの前で、タクシーを降りたが、私は、呆然として、ホテルを見上げた。
―廃屋に見える。閉鎖したのか？
タクシーの運転手は、私のスーツケースを下ろして、さっさと逃げてしまった。
私は、ホテルの前で、ウロウロしたが、
「ガイドブックの情報が、古かった！」
と観念して、他のホテルに行くことにした。
大通りまで、スーツケースを引きずって行き、手を上げて、タクシーを停めた。
もう、午後７時近くで、薄暗かった。雨も、降り出していた。
私は、タクシーに乗り込むと、
「1泊1万円もするのに！」
と思いながら、
「HOTEL NIKKO」
と言った。
あそこなら、まず、タクシー運転手が、
「場所が、わからない」
ということがないし、日系ホテルだから、日本人には、便宜を図ってくれるだろう。 （つづく）
