アユタヤ 28 危機感

「どないしたん!?」

宿に着くと、トゥクトゥクに自転車を乗せていたのと私のすりむいた足を見て、Aさんとご夫婦が飛び出してきました。

「怪我してるやんか!自転車でこけたんか!?」

「いや....あのぅ...」

トゥクトゥクから自転車を下ろしてくれるAさんに、痴漢に遭ったなんて動揺して簡単に言えませんでした。

「いいから傷口洗っておいで、消毒するし」

「...消毒は...済んでるんですけど.....」

「チャリはこわれてへんし、...消毒済んだ??...ん?どないしたん?」

問い詰められると、さっきまでの事を思い出してきて涙が溢れて来ました。

「Aさん、のんちゃんTシャツがボロボロじゃないすか」

Kさんも下りてきました。
そういえば、揉みあったときに引っ張られたのか、Tシャツの首元が伸びきっています。

「....のんちゃん、何があったんや?」


それから、すこしづつワット・シー・サンペットで起こったことをみんなの前で話しました。
外人さんに助けられたこと、警備員に言っても犯人は追えないって事。
心配そうに私を見ているご夫婦には、Aさんが通訳して説明していました。

「.....のんちゃん、ごめんな、俺が悪いんや。俺が、人が少ないうちに行けとか言わんかったら良かったんや」

Aさんが申し訳なさそうに言いました。

「違います、Aさんのせいじゃないです。...私が悪いんです、私がちゃんと気をつけなかったから...」

「いや、俺のせいや。プーカオトーン(アユタヤ島外にある白いお寺)とか涅槃像の辺りには卑猥な日本語話すタイ人がおるって聞いてたけど、シー・サンペットとかメジャーな寺に痴漢が出るとは思わんかった.....元々、雰囲気重視で人気のないとこに女の子1人で行かせた俺がアホやったわ。情けない...」

私のせいでAさんを落ち込ませてしまいました...ごめんなさい。

「着替えてから、部屋で少し休みや...。バンコクに戻るなら、夕方、俺が送ってやるしな」


部屋に戻ってシャワーを浴びました。

鏡をみたら、土埃と涙で顔がドロドロでした。

(あ~あぁ....私のせいで雰囲気ぶち壊しだよぅ...せっかく楽しくなってきてたのに...)

ベッドに横になると、体が思うように動かないことに気がつきました。

100mを全力疾走した後のような感じです。

(でもよかった...助かって...あ、...もしかしたら、ほんとにパパが助けを呼んでくれたのかなぁ...パパ...ありがとう...)


きっとそうです。

危機感を失って大変なことになるところだった私を、天国にいるパパが助けてくれたんです。

心の中でとっさに叫んだ言葉が、きっとパパに届いたんだと思います。

この宿に導いてくれたのもそうです。

今朝、遺跡に行く前にAさんが『トゥクトゥク使ったら?』って言ってくれたのに。

きっと、あの言葉もパパがAさんにお願いしたんだ!

パパ、ごめんね! ずっとそばについてくれてたのに...

外国で浮かれてたらダメだよね、前にいろんな人からあんな事、こんな事に注意しなさいって、のん、言われてたんだよ~。
危機感無さ過ぎたから、こんな事になって...でも、もうだいじょうぶだよ。



扇風機はつけてなかったけど、広げた蚊帳が、『フワッ』と揺れた気がしました。

偶然だとは思いませんでした。


パパがそこに立って、私を叱っていたんだと思います。


「危機感を持ちなさい」って。

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2件のコメント

  • アユタヤ 29 家族

    少し眠っていたんでしょうか、時計を見るとお昼を過ぎていました。

    (こんなときによく眠れたな~、私w)

    下に行くと、Kさんとご夫婦だけでした。

    「大丈夫?少しは落ち着いた?」

    ちょうどお昼ごはんの時間みたいで、3人でチャーハンを食べていました。

    「ノンチャン、イート、ランチ、イート、ランチ」

    心配そうに、でも、優しい笑顔でお昼ごはんをすすめてくれましたが、さすがに食欲がわきません。

    「コートート・カー、マイヒウ・カー」

    お腹、減ってないんです、ごめんなさいとあやまると、ウンウンと頷いてから、

    「チョ...ト、マッテ」

    と言って、奥さんはキッチンの方に行きました。

    (え...?私のタイ語、通じなかったのかなぁ...)

    Kさんは少し微笑んで、何も言わずにチャーハンを食べています。



    「OK! ノンチャン、イート、イート!」

    「.......おかゆ...?」

    奥さんがキッチンから持ってきたお碗には、おかゆが入ってました。

    (あれ?葱とか刻みノリとか梅干まで入ってる...これって、日本の....)

    「それ、Aさんがつくった日本のおかゆだよ。 のんちゃん、まだ何にも食べられないだろうけど、落ち込んでる時に何も食べなかったら余計に気落ちするから、ちょっとでも食べさせろってw
    こっちの料理は、刺激が強いだろうからって日本風にしたんだよ。
    のんちゃんとAさんが初めて会った時、バンコクからの帰り道って言ってたでしょ?
    Aさん、いつも日本の食材買いにバンコクまで行ってるんだ。
    あの人コックさんだからね、何作らせてもスッゲェ上手だよw」

    「....わざわざ、私のために...ですか...?...Aさん、どこにいるんですか?」

    Kさんは、ハハハッ!っと笑ってから、

    「あの人ねぇ、あんな風に見えてスゲェ照れ屋なんだよw よく分かんないけど、さっきもおかゆ作るのに鰹節とか昆布とかでダシ取ってさぁ、『ホンダシとか無いんすかぁ?』って聞いたら、『あんなもん、病み上がりの女の子に食わせる料理に使えるかっ!!』って怒られたよw。
    Aさんから言わせたら、いりこダシの方が福岡の田舎育ちの子には口に合うんだってw それで、今、バンコクまでいりこ買いに行っちゃった。 あ、これ俺が言ったって言わないでね。 後でAさんに怒られるからw」

    「...でも、そんなにしてもらって....私が悪いのに....」

    ご夫婦は、多分、Kさんが話している内容が分かっているのか、

    「マイペンラーイ!ノンチャン、ファミリー、A、シンパイ、ノンチャン、A、イーヒト、ノンチャン、シンパイナイ」

    それはもちろん分かってるんだけど......

    Kさんが、そんな私を見て、

    「....Aさんはねぇ、自分が声をかけてのんちゃんをここに連れてきたから、すごく責任を感じてるんだと思うよ。
    あの人、アユタヤにずっといるのは、タイの他の町とか行き尽くしたのもあるのかもしれないけど、多分、ここの家族が好きなんだと思う。
    ここの家族って、みんな見事にお人好しじゃんw
    Aさんが初めてここに来た時って、ほとんど客が来なかったらしいよ。
    んで、ここの人たちのために、どうしたらもっとお客さんが来るか、そのために色々協力したんだって。
    Aさん曰く、『俺は、俺が過ごしやすい宿を作ってるだけや!』って言うんだけどねw。
    僕もね、結構旅してる方だけど、あの人は別格かなぁ...旅慣れてる人って、それを鼻にかけるような人結構多いけど、あの人、そういう人が来ると部屋に引っ込んで出てこないからw 『せっかくリラックスしにきてんのに、そんなのに付き合う必要無い』ってw。
    この夫婦も良く言ってるけど、あの人、ホントにボスだよ、ここのw
    僕も、あのボスがいるからここに長居してるんだけどねw
    ま、のんちゃんみたいな子はほっとけないよな~、親父としては。
    バツイチで、娘さんがいたって言ってたし」



    Kさんの話を聞きながら、日本の味がするおかゆをありがたくいただきました。


    初めての海外で、こんなにおいしいおかゆを食べることになるとは思いもしませんでした。

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    アユタヤ 30 家族

    おかゆのおかげで、さっきより気持ちが楽になった気がします。

    やっぱり、何も食べないと気持ちまで落ち込んでしまうんですね。

    「のんちゃん、歩いても大丈夫なら気分転換しに散歩しようか!」

    気分も楽になってきたし、Kさんについていく事にしました。

    「あ、Kさ~ん、あそこ行くんですかぁ? 俺たちも行きますからちょっとだけ待ってもらっていいっすか? すぐ着替えますから」

    S君とT君も部屋から出てきました。

    「着替えるって...どこに行くんですか?」

    「ん? ちょっと習い事w のんちゃんはケガしてるから座って見てたらいいから。 せっかくタイに来たんだからGHにじっとしててもしょうがないからね」

    Kさんは宿の子供たちとじゃれあいながら2人を待っています。 子供たちは双子で、私には見分けがつきませんw

    「おまたせしました~、行きましょッか!」

    気合充分と言った感じで、S君とT君が出てきました。 2人ともTシャツと短パンになっただけだけど、サンダルからスニーカーに履き替えていました。


    双子の子供たちも一緒に行くようで、みんなの先頭を歩いていきます。 Kさんは、S君とT君に、『おまえら、今日は吐くなよ~』と言って笑っています。 2人は、『ちょっと鈍ってただけっすよ~、Kさんも年なんですから、あんまり無理したらダメっすよ~w』.....どこにいくのかなぁ?

    5人で15分ほど歩いて学校の校庭に着きました。ブラスバンドの練習をしている子供たちがいます。

    「ここ、中学校ですか?」

    Kさんに聞きました。

    「うん、中学と高校が一緒になってるみたいだね、詳しくないんだけど」

    校庭の片隅で、何か空手みたいな事をしてる子供たちの集団に向かって歩いていきました。

    「...空手教室ですか?」

    「う~ん...ちょっと違うなぁ、ムエタイって言って、タイのキックボクシングだよ。 K-1とか知ってる?」

    「あ!知ってますよ!マサトとか出てる格闘技でしょ?」

    「そうそう! 宿の子供たちが習ってるから、僕たちもついて来てるんだよ。最初は子供の教室ってなめてたけど、結構堪えるよ~w こいつら、この前練習終わってから吐いてたからねw」

    S君とT君を見て、Kさんは笑いました。

    「あれは、昼間に少しだけビール飲んだからですよ~w 今日はのんちゃんにカッコイイとこ見せますからw」

    3人とも子供たちの中に入って『エイッ!エイッ!』と何か始めましたw。

    (かわいいな~♪みんな)

    特に、集まってきたタイの子供たちの一生懸命な姿がすごくかわいくて☆

    でも、みんなすごく真剣なんです! 日本で言うなら、柔道とか相撲を習ってるのと同じなのかなぁ?



  • チョット~っ!!

    ヤメテよネ~(笑)泣けてきちゃったじゃない!

    アナタさぁ、いいお父様持ったわね。

    だって偶然な訳無いのヨ、そんな事って。

    アタシは若い子で性格のいい子を見るといつも思うのヨ、親の教育が良いって。

    神仏は信じないようにしてるんだけど、タマンナイわよね。

    帰ってからチャンと仏壇かお墓に手を合わせたの?

    言われなくても解ってるんでしょうけど、そういう事って大事にしなさいよ。

    命はお金で買えないんだから、たかが東南アジアではした金ケチるバカの真似してるとそんな目に遭っちゃうのよ。

    若い貧乏自慢してるバカ旅行者と月1の生理持ってる女の子じゃ最初っから違うんだからサ。

    だから前からアタシ言ってるじゃない!

    どこどこに行ってきました~なんて自慢の1つにもなりゃしないのよ(笑)
    アナタが日本に住むなら、アナタが日本の為に何をするか?なの。


    国際結婚でもしない限り、アタシみたいな事も無い訳でしょ?

    こんなサイトでアチコチ安い金で行った自慢なんて、他のトピに出てる貧乏人に任せとけばいいの(笑)

    アタシから言わせりゃ、「貧乏なクセに、サービスがどうのこうの言ってんじゃないわよ!」って感じね(笑)

    アナタは次もパッケージで行きなさい。

    ハラハラするわよ。

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    Re: チョット~っ!!

    おばぁさま、心配かけてごめんね!

    ほんとうに痴漢ですんでよかったです。でも、次は航空券だけで行きますよ~w だって、私にはまた行くことができる場所ができましたから!

    次は絶対にあぶない場所には近づきません!

    ところで、私、失恋しちゃいましたw

    昨日は、

    「私ももっとかわいい顔に生まれたかったなぁ」

    と思ったけど、今は、パパ似の顔でよかったって鏡を見て思ってます。


    外人さんと結婚するなんて考えたこともないけど(あ、おじいちゃまもそうでしたね)、母は、

    「のんを大事にしてくれる人なら誰でもいい」

    って言ってくれてるので、いつかそんな人が現れるのを待っていますw