アユタヤ 34 勘違いと故郷の味 テーブルに用意された深めのホットプレートのような鍋を見て、こんなに暑いのにタイの人は鍋物なんかたべるのかなぁ~と思いましたが、よく考えるとトムヤムクンもガイドブックで見ると鍋料理みたいな感じだし、何よりも、みんなで鍋をつついて食べるのって楽しいですよね♪ 「わ~!何が入るんですか?」 Aさんとご夫婦が持ってきた大皿には、たくさんの野菜と具材が.... 「ん?まぁ、こっちの定番野菜とか肉とか色々w タイスキってルークチン(魚のすり身を団子状にしたものだそうです)とか練り物系ばっかり大量に使う店が多いし、そんなんすぐ飽きてまうからなw 今日はバンコクで仕入れてきた鯛を使って鯛しゃぶしようか、これがホントの『鯛好き』!!.......ん?」 「アハハハハッ!Aさん、マジおっさんっすねぇ~w、のんちゃんドン引きじゃないっすかぁ!w」 「うっさいねん!w、お前、はよ突っ込み入れんからやろw、SとTも何聞こえてへんふりしてんねん、お前ら食わさへんどw!」 「いや、あの、そんなの慣れてないだけですよ~w。Kさん、余計なこと言わないでくださいよ~!ちゃんと僕らもお金払ったじゃないすか~w」 え?お金って.... 「...あのう、...お金って、みんなで払ってかって来られたんですか? 私もちゃんと払いますから。いくら払ったらいいんですか?」 Kさんがあわてて、 「あっ!!いいよいいよ! 鯛のお金だけ4人で少し出しただけw 夕食代は後で50B払えばいいんだから」 「ダメですよ~っ! だって私、迷惑かけた上におかゆとかまで作ってもらってるし、もうほんとに大丈夫ですから気を使わないでくださいっ!」 Aさんがキッチンに行ってる間にKさんがS君とT君を「キッ」とにらんでから、 「.....のんちゃん、分かった。 実を言うと、俺たち3人ともそんなにお金なんか出してないよ。 これは、Aさんがのんちゃんの事で責任感じて、『今日、みんなで鍋パやるしな!1人20Bづつ!』って言って買ってきたヤツなんだw。4人で80Bでこんな鯛なんかバンコクで買えるわけ無いけど、Aさん照れ屋だから、わざと1人20Bなんか言ってるんだよ。 だから、Aさんの気持ちを大事にしてあげて」 「でも、もうじゅうぶんしてもらったし私が悪いのに...」 「うん、わかるけどAさんはそういう人だからw。頑固だし、のんちゃんが本当に感謝してるなら知らなかったことにして、今日は頑張ってたくさん食べてねw」 「そんなこと言われても......」 「ジャジャ~ン!!」 Aさんが出てきて、私の前にお皿を出しました。 「.....あ、これ...」 出された料理は福岡の料理と同じでした! 「これ、がめ煮ですよね!」 がめ煮とは、筑前煮のことです。 「ピンポ~ン!正解! 食べ慣れたモン食べてな、体調治してバンコクに戻ってもらわんとアカンしなw 今日は山盛り食べや! 残してもかまへんからなw」 うれしくて、ありがたすぎて、世間知らずな自分が情けなさ過ぎて.....ほんとにうれしかった!! 「お前ら、またのんちゃんにいらん事言うたやろ!」 うれしくて泣いている私を見て、Aさんが3人にまた怒鳴りましたw
アユタヤ 35 勘違いと故郷の味 タイスキはピリ辛の味噌ダレにつけていただきました。 Aさんの話では、タイには有名なタイスキレストランがたくさんあって、その中でも有名なのは【MK】、【COCA】、【TEXAS】で、Aさんがいちばん好きなのは、ヤワラー地区にあるTEXASだそうです。 外人さんたちも揃って、みんなで鍋を囲み、さぁいただきま~す♪ 「まぁ、TEXASもなかなか美味しいけどな、所詮はチェーン店のレストランの味付けやし、ああゆうのはタイで食うから旨く感じるだけなんやな。日本人とタイ人の味覚は化学調味料の旨みで繋がってるとこあるけど、俺から言わせたらちょっとチープやな、味が。 今日のダシはな、鯛のアラとかでとってあるし飽きひんとおもうんやけどな」 ふ~ん...そっかぁ、私には全然わからないけど、わかる人にはやっぱりわかるんだなぁ。 そういえば私、コンビニのお弁当とかインスタント食品とかお腹いっぱい食べると少し気持ち悪くなったりするけど、あんなのはやっぱり体に悪い何かが入ってるのかなぁ..... 「料理の事になったら超厳しいッスからね~、Aさんはw。 Aさんと付き合う女の人大変でしょうねー」 「みんな同じ事言うんやけどな、そんな事ないんやで。 俺、離婚する前もメシ作ってたしなw でも、他人から作ってもらった食いモンの方が旨いと思ったりもするけどな。 自分で作る料理って、味見してる時点で飽きてる時あるし」 へぇ~、調理師さんって家では料理しないってよく聞くけど.... 「でも、やっぱり食材がいい時は自分で作りたくなるよな。 料理人のアカンところは他人が作ってる時にそばにおったらアカンねん。 下手なモンが作ってる横におったら口出ししてしまうやろ? 相手も嫌やろうしなw、自分が逆やったら絶対嫌やし。 そやから、他人の料理は、作ってるところは見ぃひんようにしてる」 Aさんは外人さんたちに説明しながら具材を鍋に入れていきます。 「でもな、俺、いつも思うんやけど、主婦の作る料理とか、ある意味すごいと思うで。 だって普通の家庭のキッチンなんか、俺たちからすればメッチャ狭いしコンロも小さいしな、あんなんで素人が2品も3品もよう作るわって思うで。 ホントの料理人はな、作りながら洗いモンして片付けながらの繰り返しやねん。 それが出来ひんかったら場所ばっかりとるやろ? そやし、たまの休みに旦那が料理したりすると、味にこだわってばっかりで片付けが大変やって奥さんがブツブツ言う訳やw、嫁さんが買物してくる倍ぐらいの金額かかるしなw」 あ!昔、ママがパパに言ってた事とおんなじこと言ってるw 「毎日毎日献立たてるのって大変なんやから。 主婦って、ホンマに大変な職業やと思うでw。 趣味で作る料理に金かけるのは簡単やけど、素人はそれがホンマの料理やと勘違いしてしまうんやろな、俺も調理師になって10年くらいはず~っと勘違いしてたって事やわ。 そやし、浮気されて捨てられたんとちゃうかなぁw」 え....?...Aさんイケメンだし、私、勝手にAさんの浮気が離婚の原因だと思ってた... 「ま、料理人なんか独立しても明日の見えへん商売やけど、客が『旨い!』って言うてくれたら、俺ら幸せやからな~w ホンマはそれだけやとアカンねんけどなw」 Aさん、タイスキ美味しいですよ。 タイスキをここ以外で食べたことはないけど、どこの店のタイスキよりもすごく美味しいです! Aさんが言うような、『こっちで食べるから...』じゃなくて、Aさんがつくった料理をみんなで食べられて、私は幸せなんです。 でも、私はタイスキもそうだけど、このがめ煮の味と、みんなと食べてるひと時を、私はず~っと忘れられないだろうなぁ..... きっと、「愛情」っていうダシを入れすぎなんですよ!
アユタヤ 36 勘違いと故郷の味 パックブーン(空芯菜というそうです)や日本では缶詰にして売られている小さいとうもろこし(Aさんは『ナンバ』って言ってました。とうもろこしのことを『ナンバ』って言うそうです!みんなも初めて聞いたって言ってました)、ふくろ茸(これも初めて!)、きくらげ(何できくらげって言うの?)、とうふ(タイでもとうふって売ってるんですね~)....いろんな野菜と豚肉と手羽先と、鯛の切り身と..... こんなの美味しいに決まってるじゃないですかぁ~っ!!w。 タレはご夫婦の特製だそうです。 そのお味は...... 「ああ~んっ!! おいしいーっ!! 私、パクチーの味ってクセになりそうです♪」 タレの中にはきざんだパクチーが入っていて、ピリ辛の風味をグンと引き立てています。 「そか、そりゃ良かった。 パクチーが好きになったら東南アジアのどこに行っても大丈夫やなw、セロリが嫌いなヤツはまずアカンけどな」 私、セロリ大好きなんですw。 「特に、この鯛のしゃぶしゃぶ美味しいですね~、コリコリして」 「おう!そう言ってくれたら作りがいのあるゆうもんやなw。ナンボでもおかわりしいや」 外人さんたちも口に合うようです。 こういうのを地球家族って表現したらいいのかなぁ、外人さんと一緒にごはんを食べるのも初めてだし、今日はすごい一日になっちゃった! 「のんちゃん、どうしたの?」 Kさんが、外人さんをじっと見てる私を見て不思議そうな顔をしました。 「あ、いや......外人さんって、箸を使うの上手だなぁって思ってw」 「あ、そっかw。 でも、今時どこの国でも日本料理のレストランとかあるからね~。 それより中華料理の影響で箸を使うのって割とポピュラーになってるから、そんなに不思議な事じゃないよw」 あ、そっか! 箸を使うのって、日本だけじゃないもんなぁ~....