スイスひとり旅 (4日目) ツェルマット、そしてゴルナーグラートからの初ハイキング その(1)

今朝のグリンデルワルトも重い雲、深いモヤの中だったが、空の色にいくぶん明るさが見える。昨晩一生懸命考えた、早朝のフィルスト or メンリッヒェンでのハイキングは取りやめて、天気予報のいいツェルマットに移動することに決めた。7:35グリンデルワルト発の電車で、まずインターラーケンに向かう。インターラーケンでは僅かな晴れ間からユングフラウが見え、今日ユングフラウヨッホに上る人はラッキーかもしれないなんて考える。シュピーツでは、乗り換えに45分も間があったので、この落ち着いた街を丘の上からゆっくり眺めることが出来た。ひんやりとした空気が気持ちよかったが、再びユングフラウの方向を眺めると、重たそうな雲と霧が出ていた。うん、朝一にツェルマットに向かう判断は正しかったかなと少し自画自賛。あとは、カンデルシュテークで途中下車してハイキングするか、ツェルマット直行かの判断だけである。シュピーツからブリークへの途中、カンデルシュテークで降りようかどうか悩んでいたら、右側の座席から声がかかった。"Do you speak English ?" うん、これは絶好の暇つぶし。人のよさそうなおじいちゃんだ。どうやら地元スイスの人でチューリッヒからシオンに向かう途中らしい。ただ、彼の英語は心もとない。まず中一レベルの会話しか通じないし、80%くらいはドイツ語の感じ。それでも、適当に話を合わせて、おまけにコーヒーまでご馳走になっているうちに、カンデルシュテークの駅に着いた。まあ、おじいちゃんのお相手もあるし、やっぱりかなり白い霧が出ていたので、ここはスルーして、一気にツェルマット直行だあ。ブリークでおじいちゃんともお別れで、教えてもらった赤い電車に向かって歩いた。SBB時刻表では徒歩7分だったが、実際は2~3分で、最後のMGB鉄道に乗り継いだ。MGB鉄道も楽しかった。天気もだんだん良くなり、渓谷の中を奥に奥に進んでいく感じがとてもよかった。駅に着くと、ここで皆さんに教えてもらった通り、ホテル専用TELで
到着を告げる。すぐに電気タクシーを用意してくれ(もちろん無料)、12:30頃ホテルにチェックイン。このホテルは★★★だったが、全てにおいて最高だった。ひとり旅でシングルルームの予約であったが、同料金でマッターホルンの見えるツインルームを準備してくれていた。ホテルのスタッフもフレンドリーで、それに内装も凝りに凝っている。花で溢れた中庭もすばらしく、通りがかりの人々が写真に取っていくほどであった。”あこがれの山”との最初の対面は、そのホテルの部屋からだった。ホテルスタッフに、”ところでマッターホルンはどちらの方向?”って聞いたところ、”何言ってるのよ?その窓から見えているじゃない”との返答。急いで、ベランダに出て、上方を仰ぎ見ると、そこには神々しく輝くマッターホルンの姿が。。。。しばし、感動に言葉を失うほどであった。少し雲はかかっていたが、マッターホルンはくっきりと姿を現して、私を歓迎してくれた。スタッフの彼女は、”昨日は天気が悪く全く見えなかった。明日もどうなるかわかりません。”っていう話。今朝も見えてなかったらしい。そんな状況なら、一刻も猶予はない。昼食もとらず、急いでGGB鉄道に飛び乗った。

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  • スイスひとり旅 (4日目) ツェルマット、そしてゴルナーグラートからの初ハイキング その(2)

    GGB鉄道の車中では、もうじっとしていられなかった。先の方の左側に雲がかかっているが、雄大なマッターホルンに夢中でカメラを向け続けた。そして、ついにTVで何回か見た(世界の絶景特集とか)ゴルナーグラート展望台に到着した。
    そこは、マッターホルンだけではなかった。周囲を取り巻く氷河も遠くまで見渡せ、今まで生きてきた景色の中でもダントツ一番の絶景であった。実は、翌日これ以上の感動的な絶景を見ることが出来るとは、その時は思いもしなかったのであるが。。。この感動的な絶景を堪能すると、なんか腹が減ってきた。そういえば、2時半になるのに、まだ昼食をとっていなかったのである。展望台のセルフレストランで昼食を楽しんで、再度外に出て見ると、マッターホルンは半分以上雲隠れし、氷河に当たっていた光は輝きを失っていた。今日は、ほんの1~2時間だけの絶景だったのである。ここで自分の幸運に心から神に感謝した。ゴルナーグラート展望台も3000mを超える標高ではあったが、ここで、昨日からハイキングに飢えていた私は、ローテンボーデンまでのハイキングを敢行した。時間は40分とのことだったが、意外にきつい下りもあり、スキーでダウンヒルを滑降している感じで足にきた。ただ、展望台とは違った角度からの氷河の眺めには、またまた感動。ただ、ローテンボーデンに着くころには、マッターホルンは完全に雲隠れし、霧もだいぶ出てきてしまった。ツェルマットに戻ったのは16時過ぎ。小雨がパラつき、もはやマッターホルンの姿などどこにも見えない。ところで、グリンデルワルトは村だったが、ツェルマットは完全に街であった。メインストリートは銀座並みの人通り、日本人比率はグリンデルワルトが50%に近かったのに比べ、ここは20%以下、西洋人、特に英国人が多いように感じた。夕食を終えて外に出ると、なんとなく周りが明るい。まさかと思って、マッターホルンの見える橋まで来ると、夜の9時にまたまた姿を現している。本当に山の天気は変わりやすいことを実感した。
    今日は、色々あったが、あこがれの山についに出会えた感動の一日であった。明日も再会できることを夢見て、心地よい眠りに着いたのであった。

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    スイスひとり旅 (5日目) 世界最高の山(マッターホルン)に取り憑かれた日

    私は日本人である。富士山の美しさも知っているつもりだ。今まで生きてきて、他の美しい山々も見てきた。しかし、マッターホルンはそれらと全然違っていた。そのスケールの大きさ、造形美、周りの氷河との調和、どれをとってもみてもこの世でこれ以上の山は考えられない。
    そして、この旅の5日目は、そのマッターホルンに取り憑かれてしまった1日であった。

    昨夜から全く星は見えない。今朝も朝から深い霧が立ち込めている。まあ標高1600mの街なので、これは普通なんだろうか。
    天気予報は一応晴だけれど、なんか雲が多いなあ。ガイドブックや皆さんの勧めもあり、やはり朝一に高いところ、クライン・マッターホルンに上ることにした。さっそく街外れの乗り場から、最初のロープウェイに乗り込む。一緒に乗ってきたイギリス人2人組は重装備だ。彼らは、クライン・マッターホルンまで上がった後、雪山を歩き、今晩は4000mを超えるところにある山小屋に一泊というスケジュールらしい。う~ん、観光だけの私とは全く目的が違う。そういえば、朝一にロープウェイ乗り場にいた西洋人の面々は、皆そんな感じだった。山歩きかスキーのどちらかだ。しかも、今日はクライン・マッターホルンはマイナス6度になっている。中間駅のトロッケナー・シュテークは素晴らしい展望だった。既に一面雪の世界だが、まだ雲の下で遥か遠くまで見渡せる。写真を撮りまくり、素晴らしい景色の興奮のままに、続けてクライン・マッターホルン行きのロープウェイに乗り込んだ。3400mのユングフラウヨッホや、3000mのゴルナーグラートで全く問題なく歩き回れたので、自分は高山病は大丈夫と自信を持っていたが、高度計が3,500mを指すあたりから、何か息苦しくなってきた。100mや200mの高さの違いのせいではなく、やはり一気に高度を稼いだせいだろう。鉄道でゆっくり上がるほうが人間の体にはやさしい。3,883mの終着駅についたが、雲の中に入っているのか、外は真っ白、おまけにマイナス6度という状況。でも、せっかく上ってきたし、高度にも少し体が慣れてきたので、視界が開けるまで少し粘ることにする。その間、日本人団体さんツアーが2,3組現れた。驚いたことに、呼吸が苦しそうになりながらも、70歳を超えたような方々が次々とマイナス6度の展望台の階段を上がってくる。おまけに写真まで撮りまくっている。戦争を経験した方々の強さを再認識した富士山より高い3883mであった。。
    ツェルマットに下りて食事を終えると、少し天気が回復してきた。午後は、予定通り、でもあまり期待しないでスネガに上がった。しかし、そこで待っていたものは、まさに神様の贈り物だった。言葉に表せない程、雄大なマッターホルンの姿。他の観光客同様、狂ったように写真を撮りまくった。そして、CAFEでゆっくりと心行くまでマッターホルンを眺めた後、マッターホルンを真正面にツェルマットまでのハイキングをスタートした。マイナス6度の世界から半袖でOKの20度の快適なハイキング。途中、マッターホルンが最高にきれいに眺められる自分だけの場所を発見。そこで、ただ山を眺めて神様がくれた幸福な午後を過ごしていた。1~2時間も経ったであろうか。どうしても気になっていたことがあった。90%以上完璧なマッターホルンであったが、どうしても左上の雲が切れない。まだ完璧無類なマッターホルンが見られていなかった。スネガにあがったのが13時ごろで、結局5時間もかけて、ゆっくりとマッターホルン三昧の午後を過ごしたのであるが、ついに最後の最後6時前になって、マッターホルンはその全ての稜線を見せてくれた。”完璧だ” 今回の旅行先にスイスを選んだこと、この日程を組んだこと、それら全てがこの一瞬で肯定された気がした。最後に部屋に戻って、ベランダから、またしても完璧な稜線のマッターホルンがすごく近くに見えた。"いったいなんて日なんだ!!”