アユタヤ 45 詐欺の定番 2人がシャワーを浴びに部屋に戻っている間、Aさん以外のみんなは2人の詐欺事件について大笑いしたり冗談を言ったりしていましたが、Aさんの表情は曇ったきりです。 私も、あたりまえの詐欺と言われていることが全く分からないのと、2人が気の毒なのと、Aさんの顔色が気になって笑えませんでした。 Aさんは、少し不機嫌でした。 「......お前ら、あんまりしょうもない事で盛り上がんな。 俺も若い頃、アチコチで騙されたりしてるし、今でもタイ人と100%同じ条件で旅できるかってゆうたら出来へんのやから。 あいつらは今時特別かもしれんけど、タイ初めてやど! おい、K、お前、チャオプロム(市場)の前でガイドブック見て道に迷ってて俺に助けられたんとちゃうんか? なぁ、SとT、お前ら、カオサンの屋台で日本語メニューのある屋台でしか自分の食いたいモン注文出来んかったって俺に言わへんかったか? お前ら、たまたまココってゆう落ち着けるトコに泊って、たまたま俺みたいにチョットだけタイに詳しい日本人と出会って、図に乗ってんとちゃうか? 特にお前(Kさん)。お前、アジアは色んなトコ行ってんのに、何で初心者の失敗談を初心者と笑ってんねん!最低やぞ、お前! 他人の失敗談笑える程、お前は偉いんか!? お前はその失敗談を、次に会った奴にネタで話して笑いでも取るんか? もしそうなら、お前のことを嫌な奴の例に取って俺がネタにしたるわ!」 いつもは優しいAさんの目が、渡し舟で見た怖い目になっていました。 みんな静まり返ってしまいました。 正直言って、私も2人の話を聞きながら「いい気味」と思っているところがありましたが、そんな自分が恥ずかしくなりました。 Aさんの行ったことのある国について、私がいつも言っていた言葉は「すごいな~」でした。 Aさんはいつも、 「何もすごい事無い。俺が旅って言う旅をしてないのは、自分が落ち着く場所を探してるだけやし、たかが旅行や、こんなんに憧れるんなら時間とお金の無駄やで。 発展途上国に来て、こんなとこに一人で泊る旅するんなら、日本に帰ってからの自分が、どれだけ恵まれてるか思い知ったらいい。 カルチャーショック受けてハマる若い子も多いけど、若い時は感情に流されたらアカンで! みんな勘違いしてるけど、日本人でいるだけで得してんのやで」 と言っていました。 私はまだ20歳。 何にも分からないけど、笑いで全てを隠すのはやめようと思いました。
その通り!! Aさんって人、全くアタシのタイプだわ!アナタ紹介しなさい(笑) アタシ達みたいな年寄りには懐かしい風景も多いんだけどサ、今のコ達が感じるカルチャーショックって何なのかしら? 日本の方がいいとアタシは思うんだけどサー(笑)
Re: その通り!! おばぁさま、こんばんわ~! 最近また削除されてたでしょw 私、見ましたよー☆ おばぁさまは過激ですからねぇw あんまり怒っちゃだめですよ~w Aさんはねぇ、おばぁさまと考え方が似てるとおもいますよぉ。 だって、Aさんがおばぁさまなのかと考えた時期があったくらいですw Aさんは顔もハンサムだと思います! だから紹介しませんよ~だw
アユタヤ 46 詐欺の定番 もちろんKさんもS君もT君も、みんな優しいいい人たちです。 Aさんは、「ああいう態度がイジメの温床になる」と、後から話してくれました。 2人がシャワーを浴び終えて部屋から出てきました。 「少しは頭も冷えたやろう、すっきりしたか?」 Aさんは、何も無かったかのように笑顔で話しかけました。 「はぁ....まぁ...とりあえず、明日はバンコクに行ってみます」 「ん、そうやな。キャンセル出来たとしたらラッキーやしな。まぁ、店は多分開いてると思うし」 「いや、マジで....恥ずかしいっス....」 「いや、しゃあないって。ただな、男やから女がらみでトラブルに遭うのは色んな意味でしゃあないねん。 でも、欲しくも無いもんは損得無しで手ェ出さんようにせんとな」 「そうっスねぇ....今考えてみると、何でスーツ買ったのか良く分からないんですよ。 『最後のチャンス!』みたいに言われて......催眠術にかかってたんスかねぇ....」 「あいつら、別に見破られようが誰彼かまわず声かけるしな。 それよりも、ツツモタセなんかに引っかからんかっただけエエやんか。 身ぐるみ剥がしよるからな」 「ツツモタセ........って、何スか?」 「あぁw、今の若い子は知らんわなぁ。 例えば、街で美人に声かけられてなんだかんだと話してるうちに、『気に入った』とか言われて女の部屋に招待されて、いいムードになってきたところに女の亭主か彼氏だかが急に入ってきて。 オマケに、その男はムエタイの達人やったりw。 他にも詐欺の定番なんか色々あるけど、今回は命に別状無いわけやし、ちょっとイタイ出費やけどな」 「ウワ~!俺、そんなの多分すぐ引っかかりますよw。タイ、ヤバイっスね」 「いやいや、あくまでも『定番』やし、今時そんなのに引っかかるほうが少ないで。 スーツの件も、ちゃんと情報持ってたらそんな目に遭わへんかったんやし、そこは反省せなあかんで。 会社の慰安旅行とかではパックツアーでガイドさんがついてて、バスの中でもトラブルについて説明があったりするけど、聞いてない奴に限って定番詐欺の餌食に遭いよんねん。 日本にツアーで観光に来て、旅館に土足で入ろうとする外人と同じレベルやど」 Kさんたち3人も唇を噛んで頷いています。 それにしても、ツツモタセの話が衝撃的で動悸がしてきました。 「いやぁ~、確かにそうっスね~。 俺、負けたくないんで、次、またタイに来ますよ! 今度はガッチリ情報持って!」 「おう! そんな気持ちで旅せえへんかったら今回の旅の意味が無くなるからなw。 若いんやし、気持ち切り替えて楽しまなアカンで」 Aさんの言葉は、私に向けて言ってくれているようにも聞こえました。 こんないい人、ほんとにいるんだなぁ....すごく、あったかい。 私のヘタな文章では伝えられないと思うけど、親から激励されているみたいで、とてもあったかいんです。 「んで、バンコクで大金使ったのはスーツだけやんな?」 「はい。他に買い物はしてないっスw。 でも、なんだかんだとお金って使いますよねぇw。 水上マーケットとか、別に安くもなんとも無いような気がしましたよ~w」 「水上マーケット? あんなもん観光ルートの一つやし、現地の人間がわざわざ利用するわけないやろ。 でも、本に載ってたら行きたくなるわなぁw」 「いや、別に目指したわけじゃないんスけど、ワットアルンに行く時にボートを借りたんスよ」 「........ワットアルンに行くのにボートをチャーターしたんか?」 Aさんが飲んでいるビールが入ったコップを持つ手が止まり、Kさんは天井を見上げました。 ワット・アルンは私も行ったお寺です。 ホテルで知り合ったご夫婦に払ってもらった渡し舟代は、たしか3Bだったような..........
アユタヤ 47 詐欺の定番 「ボートをチャーターって.....何で渡し舟使わへんかったんや?」 「え!?....いや.....トラブルがあって、かなり時間がかかるって言われたんで........え?それもウソなんスか!?」 「......渡し舟のチケット売り場まで、ちゃんと行ったんか?」 Aさんは表情ひとつ変わりません。 「いえ....乗り場に行くときに、タイ人から声かけられて......え?やっぱ、それもウソっスか!?」 「......ボート、いくらでチャーターしたんや?」 2人は顔を見合わせて、 「え~っ.....と....、2人で1時間....、2000Bって言われたのを1800Bに負けさせたんですけど」 「んで、チャーターしたのは何時間やねん」 「......2時間です...」 Aさんは頭をかきながら、 「3600Bか.....1万超えやな。 まぁ、ボラれたかどうかは自分達の満足度にもよるし、何とも言えへんけど、ボラれてんなぁ...」 「えっ!?でも、2人で2時間ですよ?」 Aさんは困った顔になりました。